作曲家と料理のお話 第15回(シューベルト)

友人シュパウンへある時宛てた手紙によると1822年ウィーンでは、毎週3回朗読会を開いていたようです。
朗読会ではビールを飲んだり、ソーセージを食べたりしていたようですが、楽しかった日々も過ぎ、健康面での不安と同時に、喜びもなく友人もなく毎日を過ごしていた時期には、朗読会には、ほとんど参加しなくなり、さらに、数日のうちには解散式も行われる予定にもなっていたようです。合わせて仕事の方も思うように評価されないこともあったようで、少し陰鬱な日々を過ごしていたようですが、この頃、シューベルトのもとに届いていたウィーンの最新のニュースは、ベートーヴェンがコンサートを開き、彼の新しいシンフォニー、新しいミサから3曲、新しい序曲を1曲披露する、というものだったようです。これに影響を受けたのでしょうか。大きなシンフォニーへの道を切り拓いていこうと思っていたようです。
シューベルトはビールが好きで、日常的に飲んでいたようです。朝6時半から昼過ぎまで作曲し、それからレストランや酒場に行き、友人達と集まってビールを飲みながら歓談していたようです。

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酒場で友人達と歓談しているシューベルト

今日は、彼が朗読会で仲間たちと楽しく口に運んでいたと思われるソーセージ(フランクフルト)にザワークラウトを添えた一品、彼が好んで旅をしていたザルツブルクの伝統料理から二品、シュヴァイネブラーテンのクヌーデル(じゃがいも団子)添えとデザートのザルツブルガーノッケルン、そしてフルーツには、彼が21歳の頃、ぶどう狩りをするためにブダペストを訪れようと考えていたことに因んで、ぶどうを選んでみました。

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後に、再びザルツブルクへ旅した時には、「その周辺の景色は、どんな空想の翼も及ばない程素晴らしい」と表現していたようです。

1825年シューベルトは友人とザルツブルクへ旅していますが、兄へ宛てた手紙の中で旅先で目にした景色について触れています。
「たった今まで雪に覆われていた山の頂上が、ザルツブルクの谷からくっきりとそびえ立っているのが見えてくる。・・・」

デザートのザルツブルガーノッケルンはアルプス山脈をイメージして作られたザルツブルク発祥のお菓子だそうです。山のように作るのが難しかったので今回は味わいだけを楽しむ形になりました。
シューベルトは自然を愛し、自然の中を歩くのが好きだったようです。

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ザルツブルクの自然の風景

またシューベルトは、この旅で、ミヒャエル・ハイドンが住んでいた聖ペーターの修道院を訪れ、ハイドンの記念碑を崇めながら大粒の涙を流したようです。
訪れた様々の場所で目にした光景や溢れる思いが作品の中に込められ、それは作品の中で生き続け、音を通して伝わってくることに感動しながら、当時の味わいを楽しんでみました。