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Dr.Cloverキーマスター吉田先生、ご質問ありがとうございました。
尺骨神経麻痺の手術を受けたが症状改善なく、今後何か改善の手立てはないかというご質問ですね。ご存知の通り、尺骨神経は手の小指側(尺側)の運動や感覚を司る神経です。
神経は全て脳につながっていますので、この尺骨神経も小指から脳までつながっております。
その長い経路のどこにでも障害が起きる可能性があり、どこが障害されたとしても結果としてご質問に書いて頂いたような症状を来す可能性があります。
しかしながら、経験的には障害が起きることの多い場所として、第1が肘、第2が手首であることがわかっています。
先生の記載からはおそらく肘に原因があったのではないかと推察致します。
原因となった場所により治療が異なる部分がありますので、以下、肘が原因だったと仮定してお話させて頂きます(ので、違う場合はお知らせ下さい)。治療法もご承知の通り、保存的治療(体にメスをいれない治療)と手術治療の2種類があります。
いずれの方法に関しましても、医学全体の中で言えば、データや研究の蓄積が分厚いとは言えない分野です。
基本的には保存的治療で改善が得られない場合に手術に踏み切ることになります。
手術に関しては2008年までの過去の研究をまとめた結果、術後症状改善した方の割合が約70%との報告がありました(Macadam SA 2008)。
逆に言いますと30%は改善がなかったことになります。
また病歴を伺いますと、1989年に診断され、1999年に神経剥離移行術施行とのことですからこの間10年の時間があったことになります。
途中経過の詳細まではわかりませんが、症状が2年間以上続いた後の手術の効果には疑問を呈する専門家もいますので、先生の場合は10年間お悩みになった末に、改善の可能性は高くはないかもしれないが回復の望みをかけて手術に踏み切られたのではないかと推察致します。さて術後に改善しない可能性は30%以上もあるわけですが、その場合にどうしたらよいのかについて一般的な医学書は沈黙しております。
つまり確固たる方法はお示しできないのが現状であります。
しかしながら、既にご承知かとは思いますが、保存的治療やそもそもこの尺骨神経麻痺を来すリスクとなる要因について思い返すことから、いくばくかの示唆を得ることはできるのではないかと考えました。保存的治療の原則は単純であり、症状を誘発する姿勢、運動を避けるということに尽きます。
これを生活の中で具体的にどう実践するかということですが、以下のようなアドバイスがありましたので列挙しておきますのでご参考になさってみてください。・座る時や運転するときなど肘をつかない。腕組して座らない。
・肘を曲げた状態を長時間続けない
・電話をかける時には反対の手やヘッドセットを使う
・夜間寝る時に肘にタオルを巻く(肘の屈曲を制限する)
・肘にやわらかいパッドをあてるなおこの点で気になるのはチェロの演奏姿勢そのものです。チェロ演奏時、肘は長時間曲がった状態を維持しているように見えます。
そうだとしますと、この姿勢そのものが尺骨神経に負担がかかる姿勢ですので、適切な休息が必要だと思われます。次に尺骨神経麻痺を起こしやすくなるリスク因子ですが、喫煙を挙げている研究が複数ございました。
ですのでそもそも喫煙しておられないかもしれませんが、もし喫煙されているようであれば禁煙することも今後のために有益であろうと思います。[参考論文]
Simple decompression versus anterior subcutaneous and submuscular transposition of the ulnar nerve for cubital tunnel syndrome: a meta-analysis.
Macadam SA, Gandhi R, Bezuhly M, Lefaivre KA
J Hand Surg Am. 2008;33(8):1314.e1.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0363502308003225
Dr.Cloverキーマスター棚瀬先生、ご質問ありがとうございます。
まずガングリオンとは何かということですが、これは関節あるいは腱の上にできる嚢胞(のうほう)です。
嚢胞とは聞き慣れない言葉ですが、膜の中に液体のつまった袋のことです。イメージ的には水風船です。
ただガングリオンの中身は、さらさらした水ではなく、ゼラチン状の粘液です。ガングリオンはあらゆる年代の方にできることがあり、若干女性に多いことが知られています。
できる場所はご相談の通り「手の甲」が最も多いです。ガングリオンができてしまう原因は解明されていません。手の使いすぎが関係するかどうかもはっきりしていません。なので「鉛筆の使い過ぎ」の関係性は不明ですが、鉛筆を使っていて明らかに痛みが増すのであれば、使用を一時的に控えめにしたり、キーボードなど他の筆記手段を考えてよいと思います。大変だとは思いますがこれを機会に左手でトライしてみると、案外ピアノの上達の役立ったりするかもしれません。
治療法ですが治療は基本的には、体に針やメスをいれる侵襲的なものになります。
ガングリオンの半分以上は自然に消えてしまいますので、侵襲的な治療をしたくない場合は、まずは何もせずしばらく経過を見てみることも有用です。しばらく見ても全然よくならない、むしろ大きくなる、痛みなどの症状がつらすぎて日常生活に支障をきたすような場合は、積極的な治療を考える必要があります。
治療法の1番はガングリオンに針をさして中身の粘液を吸い出してしまう方法です。即効性があり副作用もなく有効な方法ですが、問題点は1年以内に半数以上の方が再発することです。特に治療後すぐに再発する場合は、経験的に繰り返し針刺し吸引をしても無益であることが知られています。治療後、だいぶ時間がたっての再発であれば針刺しを繰り返すことが有効だと思います。
なお、この針刺し吸引の際に再発防止目的のためにステロイドを注射することがありますが、これは副作用が増えるばかりでメリットがないと考えられていますのでやらないほうがいいでしょう。
針刺し吸引で治らない場合、第2の方法は手術になります。これは非常に有効性が高い方法ですが、手術をもってしても10%程度の再発があることが知られています。
まとめますと、しばらく様子を見る or 針刺し吸引 → 手術がガングリオンとのつきあい方になります。
時にガングリオンを潰す(手や本などで強く圧迫して水風船を破る)という治療法がなされることがありますが、これは針刺し吸引法より不確実なため、オススメできません。余談ですが、本で潰す方法を英語圏では「聖書で追い出す」と表現することもあるようです。
現在は「少しだけ痛みがとれて、ガングリオンも小さくなって来た様子です」とのことですから、ガングリオンの半分以上の方がたどる幸運なコース、つまり自然治癒する途上にあると考えられますので、このままお母様のマッサージを続けられるのがよいと思います。
Dr.Cloverキーマスターお悩みを投稿してくださる皆様に感謝しています。
自分と同じことを感じたり考えたりしている人がいると知るだけで、励まされる人たちがたくさんいると思います。
問題を言語化すること、それ事態が既に解決に向けた大きな一歩です。
三人寄れば文殊の知恵と言います。
様々な経験と背景を持った人々が意見を交わす時、思ってもみなかったような良い知恵が浮かぶかもしれません。
皆様からのご回答も楽しみにお待ちしています。
微力ながら私も皆様のお役に少しでも立てるよう知恵を絞って参ります。
Dr.Cloverキーマスターkuroneko様、ご質問ありがとうございます。
本番で緊張しすぎてしまい、練習の成果を発揮できないとのお悩みですね。緊張のマネジメントとしまして、先日のlovepeach様への回答では、リラックスするように体に働きかける(指先を温める)こと、自律訓練法、本番さながらの環境での経験をたくさん積むことをご提案させて頂きました。
体から働きかける方法としてこれに加えるならば、呼吸を意識すること(呼吸法)をお勧めしたいと思います。
人間緊張しますと必ず体に反応がでてきます。心臓がドキドキしたり、瞳孔が開いたり、呼吸が浅く早くなったり色々なことが起きます。基本的にこれらは体が勝手に反応してしまうことであり、意識でどうこうするのは非常に難しいです。これらの変化の中で例外的に自分の意識でコントロールできるのが呼吸です。
普段の生活で、緊張している時、リラックスしている時、眠りに落ちようとしている時、自分がどんな呼吸をしているか観察してみて下さい。そして緊張が高まった時には、リラックスしていい演奏が出来ている時の呼吸を思い出して意識的にそのように呼吸してみて下さい。
さて今までは主に体に働きかける方法を書いてきましたが、視点を変えて心や頭に働きかける方法について考えてみたいと思います。
kuroneko様は「緊張を緩和して、練習の成果を発揮できるようにするにはどうした良いでしょうか?」とお尋ねになりました。この文面からは、kuroneko様にとって本番の演奏は、練習の成果を発揮する場と理解されているように見えます。
そうだとすると、練習中こそ実は100点の演奏ができていて、本番はそこからいかに減点を避けるかが問題となる「減点の場」であるような印象を受けます。もし無意識のうちに本番をこのように理解していたとしますと、本番はいかに減点されないかという消極的なことだけを考える時間となってしまい、非常に強いストレスになるのは当然のように思えます。おそらくこの時、意識は自分に集中しているのではないでしょうか。「自分はうまくひけるだろうか?失敗しないだろうか?」と。
とても根本的なことになりますが、本番とは何なのか、人前で演奏する目的は何なのか、音楽とは何なのか、そういうことを考えてみることが遠回りなようで緊張を緩和する役に立つかもしれません。
宮澤陽子先生が紹介されていた偉大なピアニスト、ルービンシュタインの言葉が示唆に富むと思いましたので引用します。
「若かりし頃の私は音を間違えるチャンピオンでした。でも、聴衆はお金を払った分すべての音符を聴きたいのだと理解したんです。それに気づいてからは猛練習をしました。」
ここではっきりわかるのは、ある時ルービンシュタインは自分ではなくお客さんが見えたということです。もちろんお客さんは最初からずっといたのですが、意識がむいたのです。そしてその時以来、自分のためというより、お客さんのために演奏するようになったのだと思います。
例えば、音楽を聴きに来てくれた聴衆のために演奏を通して自分にできるだけの奉仕をする、本番をそのような場だと考えたらどうでしょうか。自分ではなく、相手を喜ばせることに意識を集中させることができれば、緊張もまた変わってくるのではないでしょうか。
ぜひ演奏技術を磨かれるとともに、よい先生やお仲間とお話をされたり、古今の偉大な音楽家の言葉などに触れて、心にたくさんの宝を蓄えて素晴らしい演奏で人々に喜びを与えてください。それは音楽家にしかできない尊い仕事です。
kuroneko様の演奏が一人でも多くの人に笑顔を届けることを願っています。
Dr.Cloverキーマスターlovepeach様、ご質問ありがとうございます。
本番になると指先が冷えて思い通りに動かなくなってしまうとのお悩みですね。
これは強い緊張からくる症状です。
人間には自律神経というものがあり、これが緊張と弛緩(リラックス)のバランスをとっています。
自律神経は緊張を司る交感神経と弛緩を司る副交感神経からなっています。
緊張して交感神経がたかぶると身体にいろいろな変化が現れます。
脈拍が早くなり、口が乾き、そして血管が収縮します。
一言でいえば戦闘状態なのですが、血管が収縮していれば戦闘で体に傷を負っても出血は少なくすむメリットもあります。
そういう進化的な理由もあって獲得されたであろうメカニズムが私たちの体には備わっているということです。では指先の冷えを解決するにはどうしたらいいのでしょうか。
1つはリラックスすることです。その結果として指先の血流が増し温かくなります。
もう1つはすでにlovepeach様のされているように指先を温めることです。
指先が温まっているのは、眠い時など考えてみればわかると思いますが、リラックスしている時です。
体の方をその状態にしてしまうことで、心の方がそれに応じてリラックスした状態になることが期待できます。指を温めることは既にやっておられますから、知りたいのはどうすればリラックスできるかという具体的な方法だろうと思います。
リラクゼーションのテクニックとして医療で使用されることがあるのは自律訓練法という方法です。
ネットに沢山情報があります。ここはその1つです。
http://www.cephal.med.kyushu-u.ac.jp/methods/AT.htmいくつかの段階を経て徐々により深いリラックス状態に入れるように自己コントロールしていきます。
自律訓練法でまずやるトレーニングが「手足がとても重たい」「手足が温かい」とイメージし体感していくことです。
練習すれば実際にそう感じることができるようになってきます。
もしかするとこの技術が役に立つかもしれません。ここで注意しておかなければいけないことがあります。
自律訓練法は基本的にひたすらリラックスすることを目的としています。
しかしlovepeach様が指先の冷えで困るのは、緊張が行き過ぎて演奏に支障をきたすことでした。
本番前にある程度緊張するのは当然のことですし、よい演奏をするという目的のためには、完全にリラックスしているよりも程よい緊張状態にあったほうがいいだろうと思われます。
緊張を完全に弛緩させるのではなく、程よいレベルに緩和するという目的であれば、医療的な自律訓練法よりも適した方法があるかもしれません。今年から札幌コンセルヴァトワールの講師になられる後藤絵里先生は、アレキサンダーメソッド、ヨガ、太極拳、アロマテラピーなど様々な技術を習得され、ピアニストに必要な技術として体系化しチェコで博士論文にまとめておられるところです。
演奏という目的においては、このような演奏家によって現場で検証された技術の方が適切だろうと思います。
後藤先生には当公式ブログにて、この方法論について記事を書いてもらい、音楽院では実際のコースを開催してもらう予定ですので楽しみにお待ちください。とはいえ自律訓練法も無駄ではなく、演奏会終了後にはとても有効だと思います。演奏会の夜は目がさえて寝付けない方も少なくないですからね。
もう一つ、医学的なアドバイスをするとしたら、とにかく場数を踏むという、つまりは演奏会の数をこなすのも有効だと思います。
不安障害に対しては、暴露療法といって、恐怖・不安を感じる状況や場所、環境に敢えて自ら身をさらす方法という方法があります。
要は慣れによって克服できるということです。お役に立てば幸いです。
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