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#2986
Dr.Clover
キーマスター

吉田先生、ご質問ありがとうございました。
尺骨神経麻痺の手術を受けたが症状改善なく、今後何か改善の手立てはないかというご質問ですね。

ご存知の通り、尺骨神経は手の小指側(尺側)の運動や感覚を司る神経です。
神経は全て脳につながっていますので、この尺骨神経も小指から脳までつながっております。
その長い経路のどこにでも障害が起きる可能性があり、どこが障害されたとしても結果としてご質問に書いて頂いたような症状を来す可能性があります。
しかしながら、経験的には障害が起きることの多い場所として、第1が肘、第2が手首であることがわかっています。
先生の記載からはおそらく肘に原因があったのではないかと推察致します。
原因となった場所により治療が異なる部分がありますので、以下、肘が原因だったと仮定してお話させて頂きます(ので、違う場合はお知らせ下さい)。

治療法もご承知の通り、保存的治療(体にメスをいれない治療)と手術治療の2種類があります。
いずれの方法に関しましても、医学全体の中で言えば、データや研究の蓄積が分厚いとは言えない分野です。
基本的には保存的治療で改善が得られない場合に手術に踏み切ることになります。
手術に関しては2008年までの過去の研究をまとめた結果、術後症状改善した方の割合が約70%との報告がありました(Macadam SA 2008)。
逆に言いますと30%は改善がなかったことになります。
また病歴を伺いますと、1989年に診断され、1999年に神経剥離移行術施行とのことですからこの間10年の時間があったことになります。
途中経過の詳細まではわかりませんが、症状が2年間以上続いた後の手術の効果には疑問を呈する専門家もいますので、先生の場合は10年間お悩みになった末に、改善の可能性は高くはないかもしれないが回復の望みをかけて手術に踏み切られたのではないかと推察致します。

さて術後に改善しない可能性は30%以上もあるわけですが、その場合にどうしたらよいのかについて一般的な医学書は沈黙しております。
つまり確固たる方法はお示しできないのが現状であります。
しかしながら、既にご承知かとは思いますが、保存的治療やそもそもこの尺骨神経麻痺を来すリスクとなる要因について思い返すことから、いくばくかの示唆を得ることはできるのではないかと考えました。

保存的治療の原則は単純であり、症状を誘発する姿勢、運動を避けるということに尽きます。
これを生活の中で具体的にどう実践するかということですが、以下のようなアドバイスがありましたので列挙しておきますのでご参考になさってみてください。

・座る時や運転するときなど肘をつかない。腕組して座らない。
・肘を曲げた状態を長時間続けない
・電話をかける時には反対の手やヘッドセットを使う
・夜間寝る時に肘にタオルを巻く(肘の屈曲を制限する)
・肘にやわらかいパッドをあてる

なおこの点で気になるのはチェロの演奏姿勢そのものです。チェロ演奏時、肘は長時間曲がった状態を維持しているように見えます。
そうだとしますと、この姿勢そのものが尺骨神経に負担がかかる姿勢ですので、適切な休息が必要だと思われます。

次に尺骨神経麻痺を起こしやすくなるリスク因子ですが、喫煙を挙げている研究が複数ございました。
ですのでそもそも喫煙しておられないかもしれませんが、もし喫煙されているようであれば禁煙することも今後のために有益であろうと思います。

[参考論文]
Simple decompression versus anterior subcutaneous and submuscular transposition of the ulnar nerve for cubital tunnel syndrome: a meta-analysis.
Macadam SA, Gandhi R, Bezuhly M, Lefaivre KA
J Hand Surg Am. 2008;33(8):1314.e1.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0363502308003225

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