作曲家と料理のお話 第11回 (ワーグナー)

前回はイースターに因んだお料理をご紹介しました。

キリスト教の暦は、カーニバル(謝肉祭)→ レント(四旬節)→ イースター(復活節)と進みます。

レントは断食の期間です。断食といっても完全な絶食ではなく、肉、乳製品、卵のような贅沢品を避けて過ごすのが一般的です。カーニバルはこの断食前に肉や美味しいものを食べて楽しく羽をのばしておこうという期間です。このカーニバルの最終日には、乳製品や卵を豊富に使ったパンケーキを食べるという習慣もあり、この日はパンケーキ・デーとも呼ばれます。

今日はこのパンケーキにちなんだお料理を紹介したいと思います。登場する作曲家は「楽劇王」の名で知られる19世紀ドイツの巨匠、リヒャルト・ワーグナーです。

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スイスのトリープシェンにあるワーグナーの自宅

ワーグナーと妻コジマ(リストの娘)はスイスのトリープシェンで暮らしていました。あるパンケーキデーのこと、ワーグナーはコジマにパンケーキを買うため町へ出かけました。

前日の月曜日は、家の人手が普段より少なく、コジマは、食事、遊戯、散歩と、子供たちにかかりきりでした。その様子を見ていたワーグナーはコジマのことを「やさしいめんどりさん」と呼んだそうです。

普段の労をねぎらい、コジマに少しでも休んで欲しかったのかもしれません。けれど残念ながら、この日は既にパンケーキは売り切れで買うことができませんでした。仕方なくその翌日にパンケーキをポンスと一緒に味わったようです(ということはもうレントだったはずですけれど!)。

パンケーキの温かくてフワッとした食感、優しい甘さは食べた瞬間に口の中に幸せが広がるような気がしますよね。ワーグナーは少しでも多くコジマの嬉しそうな表情を見たかったのでしょうね。

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リストの次女でワーグナーの妻コジマ

美しい自然に囲まれたトリープシェンの地で、素晴らしい音楽に包まれながら、口の中に広がるパンケーキの味わいはどのようなものだったのでしょう。

ワーグナー家では、子供を連れて町へ出かけ、アイスクリームを食べることもあったようです。スイスは歴史的な農業国で、とりわけ牧畜は古代ローマ時代にもさかのぼると言われ、牛乳の生産量も多く、当時、きっと新鮮な牛乳や良質の卵なども豊富で、美味しいアイスクリームが提供されていたのでしょうね。

今回は、スイスのドイツ語圏の朝の食卓の定番ともいわれる伝統的なレシュティと呼ばれるパンケーキと、プレーンなデザート感覚のパンケーキの2種を並べてみました。パンケーキ・デーのパンケーキは薄めに焼くという言い伝えがあったようです。またパンケーキと当時のスタイルに出来るだけ近いような素朴な味わいのアイスクリームも添えてみました。

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