今年2月に開催された札幌コンセルヴァトワールの発表演奏会では高知県からのゲストとの交流演奏会がありました。
さて高知には『鯉のぼり』で有名な作曲家 弘田龍太郎がいます。『鯉のぼり』は彼の大学時代の作品と言われています。彼が幼児期を過ごした街 安芸市は『童謡の里』と呼ばれています。
弘田は晩年、幼稚園の園長を務めていたそうですが、幼児教育に、音楽を積極的に取り入れ、リズム遊びの指導にもあたっていたそうです。リトミックに通じるものを感じさせますね。
弘田は、北原白秋や相馬御風らと組んで、数多くの童謡を生み出しました。今月は、それらの傑作の中の一曲、『春よ来い』を取り上げたいと思います。
⚫︎春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが
赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている
⚫︎春よ来い 早く来い
おうちのまえの 桃の木の
蕾もみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている
作中に登場する「みいちゃん」は作詞者である相馬御風の長女を歌ったものと言われています。この作品が書かれたのは彼女が2才になる少し前のようですので、きっとよちよち歩きの可愛らしい娘の姿が歌詞の中にしたためられているのでしょう。
相馬御風の生まれ故郷であり、帰郷後生涯を過ごした新潟県は、日本海側気候で豪雪地帯ですが春の訪れを待ち焦がれる思いは、北海道に住む私達にも通じるものがあります。
雪解けの頃、年上の兄達が「おもて」で楽しそうに駆けまわる様子を、まだ歩きはじめたばかりの「みいちゃん」が、家の中から自分も早くそこに加わりたいと見つめる愛らしい後ろ姿が目に浮かぶようです。
二番の歌詞では、今にも花開きそうな桃の木の瑞々しさが表現され、歌っているだけで北海道でも、もうすぐそこまで来ている春の情景が目の前に映し出されるようですね。